法定共用部分と規約共用部分
法定共用部分と規約共用部分は、マンションやビルなどの区分所有建物における共用部分の区別を表す用語です。それぞれ、法律に基づく共用部分と管理規約に基づく共用部分を意味しています。
1. 法定共用部分
法定共用部分とは、区分所有法で定められた、建物の構造上または使用上、自然に共用部分とされる場所のことです。これらの部分は、全ての区分所有者が共同で利用することを前提にしているため、法律上、自動的に共用部分として扱われます。
具体例:
- 建物の構造上重要な部分
- 外壁や屋根、基礎などの建物全体を支える部分は、物理的にすべての区分所有者が依存しているため、法定共用部分となります。
- 使用上共用する部分
- エントランス、廊下、階段、エレベーターなどは、区分所有者が日常的に共同で使用する部分であり、自然に共用部分とされます。
法定共用部分の特徴:
- 登記不要: 法定共用部分は、法律に基づき自動的に共用部分となるため、特に登記する必要がありません。これらの部分は建物の区分所有者全員の共有財産と見なされます。
- 管理責任: これらの部分に関しては、区分所有者全員で管理を行うか、管理組合が代行して管理を行います。修繕費用などは、区分所有者の持分に応じて負担します。
2. 規約共用部分
規約共用部分とは、建物の区分所有者の管理規約に基づいて共用部分とされる場所です。規約共用部分は、法律上は共用部分とされない場所であっても、管理規約によって共用部分として扱われます。
具体例:
- 特定の部屋や区画
- 例えば、集会所として使用する部屋や管理事務所、来客用の駐車場など、特定の使用目的のために共用部分とすることができます。
- 設備やスペース
- 庭や駐車場なども規約で共用部分とすることがあり、全体で利用される設備やスペースがこれに該当します。
規約共用部分の特徴:
- 登記が必要: 規約共用部分として扱われる場合、登記をして「共用部分である旨の登記」を行う必要があります。これにより、規約共用部分が第三者に対しても公示され、法的に保護されます。
- 設定の自由度: 法定共用部分と異なり、区分所有者の合意や管理規約に基づいて任意に設定されます。区分所有者の合意によって特定の部分を共用部分として扱うことが可能です。
3. 法定共用部分と規約共用部分の違い
項目 | 法定共用部分 | 規約共用部分 |
---|---|---|
設定の根拠 | 区分所有法に基づく | 管理規約に基づく |
登記の必要性 | 登記不要 | 「共用部分である旨の登記」が必要 |
共用部分の例 | 廊下、階段、外壁、屋根、エレベーターなど | 集会所、管理事務所、駐車場、庭など |
管理方法 | 区分所有者全員の共有財産、自動的に共用 | 区分所有者の合意に基づき任意に設定 |
第三者への対抗力 | 自動的に共用部分となる | 登記をすることで第三者に対抗できる |
共用部分である旨の登記
共用部分である旨の登記の目的
共用部分である旨の登記は、共用部分が区分所有者全員の共同所有であることを第三者に対して明示し、その部分が個人の専有部分ではないことを証明するために行われます。具体的な目的としては以下の点があります。
- 権利関係の明確化
共用部分が誰のものか不明確になると、権利の紛争が発生する可能性があります。登記によって共用部分であることを明確にすることで、その部分が区分所有者全員の共有財産であることを証明します。 - 第三者への対抗力
共用部分が誰のものであるかを登記簿に明示することで、第三者(例えば、敷地の買主など)に対してもその共用部分に関する権利を主張できるようになります。 - 売買や処分の制限
共用部分は区分所有者全員の共有財産であり、個別に売却したり処分することはできません。登記によって共用部分であることが公示されることで、売買や処分の対象外であることが保証されます。
共用部分である旨の登記の具体例
例えば、マンションのエントランスや廊下が共用部分である場合、その旨を登記簿に記載することで、そのエリアが全ての区分所有者の共有財産であることを明確にします。これにより、区分所有者の一人がそのエリアを勝手に占有したり、売却することはできなくなります。
共用部分である旨の登記の必要性
共用部分である旨の登記は、区分所有法に基づいて行われ、区分所有者全員の利益を守るために重要な役割を果たします。この登記がされていないと、共用部分の管理や処分に問題が生じる可能性があるため、法律上必要とされています。
まとめ
- 法定共用部分は、建物の構造や使用上から自動的に全ての区分所有者が共有する部分であり、登記の必要はありません。
- 規約共用部分は、管理規約に基づいて共用部分とされる場所であり、登記が必要です。規約共用部分は法律で定められているわけではなく、区分所有者の合意によって設定されるため、柔軟に対応できる特徴があります。
両者は、マンションやビルの維持管理において重要な役割を果たしており、それぞれの性質に応じた管理が求められます。
- 共用部分である旨の登記とは、マンションやビルなどの共用部分が区分所有者全員の共有財産であることを登記簿に記載する登記です。
- この登記により、共用部分の権利関係が明確になり、第三者に対してもその権利を主張できるようになります。
- また、共用部分が個別に売却されたり、勝手に処分されたりすることを防ぐためにも、この登記は重要です。
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