寄与分獲得の難しさ。親の介護の対価は相続で求めてはならない。

 『寄与分』とは、共同相続人の中に被相続人の財産維持や増加に貢献した相続人が、遺産分割で法定相続分よりも多く財産を相続できる制度です。共同相続人以外の寄与分を『特別寄与分』といいます。

 例えば、兄弟姉妹は3人で、長女の私だけが、親と同居し、両親の世話をしています。毎日仕事が終わってからも親の介護できついのに、親が亡くなっても、法定相続分だと他の兄弟と貰える遺産は同じ。

 お金が全てではなく、親にも感謝していますが、年に1~2回しか両親を見に来ない他の兄弟と同じ遺産しか頂けないと思うと、少しもやもやするよう。

 このような方は日本中で多い気がします。もちろん、同居されているということで、生活費等は多少は他の兄弟よりも少ないでしょうが、身体的・精神的負担は大きいと思います。今や福祉はどこも一杯で、例えお金を持っていても老人ホームに入れなくて予約待ちの状況が続いたりします。

 さて、親の介護をしたとしても、法律上は扶養義務といって、一定の範囲内の親族が、経済的に自立できない親族を経済的に援助する義務があります。親と子どもは互いに扶養義務を負っており、親は子どもが経済的・身体的に自立できるまでその生活を支える義務があります。よって、親の介護の対価を寄与分として反映させることはほとんどできません。

 寄与分自体は共同相続人全員で話し合って決めますが、まず、同居してないからといって、全員が自分の相続分を減らしてまで寄与分を認める相続は少ないと思います。貰えるお金は貰うのが人間です。少し悲しいですが、それが現実です。

 共同相続人の話し合いで決まらなければ、家庭裁判所が判断しますが、ほとんど期待してはいけません。

 寄与分として認められるためには、先ほど書いた扶養義務では足らず、通常期待されるような程度を超えるような貢献をする『特別』な寄与行為が必要です。また、寄与行為は無償もしくはこれに準じるものが原則です。なぜなら、有償であるならば、そもそもそこで対価関係は終了しているので、寄与分は請求できないからです。

 寄与分には今回の様な療養看護型だけでなく、財産管理型や扶養型、事業従事型など複数ありますが、そのどれもが厳格な要件が必要で、ほぼ認められません。よって、相続財産に寄与のある方はあらかじめご両親と話し合い、納得した上で遺言によって還元するのが良いのかもしれません。もちろん、その際は、付言事項等などを添えてあげて、なるべく相続トラブルに発展しないようにしてあげてください。


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