不動産登記法での報告的登記と形成的登記について
「報告的登記」と「形成的登記」は、不動産登記において、登記の性質や効果の違いに基づいて分類される概念です。これらは、不動産に関する権利の設定や変動の手続きにおいて重要な役割を果たします。
1. 報告的登記(報告的効力)
報告的登記とは、権利の発生、変更、移転などの法的事実が既に発生しており、その事実を第三者に対して明確にするために行う登記です。この場合、登記自体が権利の発生を伴うものではなく、すでに存在する権利や事実を「報告する」ために行われます。日本の不動産登記制度の大部分がこの報告的登記に該当します。この報告的登記はしないと罰則があります。相続登記も報告的登記に分類されると思います。
特徴:
- 権利の発生自体は登記に依存しない。例えば、売買契約に基づく所有権の移転は、契約が成立した時点で当事者間で発生しているが、その事実を第三者に対して対抗するために登記を行う。
- 対抗力の付与:登記を行うことで、その権利を第三者に対して主張できる(民法177条に基づく対抗要件)。
例:
- 所有権移転登記:AさんがBさんに土地を売却し、売買契約に基づいて所有権が移転します。この時点で所有権は移転していますが、Bさんが第三者に対してその権利を主張するためには登記が必要です。この登記は、すでに発生した権利(所有権の移転)を報告するための登記です。
- 抵当権設定登記:抵当権の設定契約は当事者間で有効に成立しますが、その抵当権を第三者に対抗するためには登記が必要です。
2. 形成的登記(形成的効力)
形成的登記とは、登記を行うことで初めて権利の発生や変更、消滅が生じる登記です。この場合、登記自体が権利を発生させたり、変更させたりする「形成的」な効力を持ちます。形成的登記は、日本の不動産登記制度では例外的であり、特定の場面でのみ適用されます。
特徴:
- 登記によって権利が初めて成立する。登記がなければ、その権利自体が存在しないか、法的に有効にならない。
- 権利の発生要件として機能する。
例:
- 区分建物の登記:建物を区分所有する際、その建物が区分所有建物であることを示す「区分登記」が必要です。この登記が行われないと、区分所有権が成立しません。
- 信託の登記:信託財産に関する権利を設定する場合、信託登記が行われることで初めてその権利が発生します。
報告的登記と形成的登記の違い
報告的登記 | 形成的登記 | |
---|---|---|
権利の発生時点 | 登記の前に権利が発生している | 登記によって権利が発生する |
登記の役割 | 既に発生した権利を第三者に対して報告・明示する | 登記によって権利が成立・発生する |
主な例 | 所有権移転登記、抵当権設定登記 | 区分建物の登記、信託の登記 |
表示に関する登記での報告的登記と形成的登記
「表示に関する登記」は、不動産の物理的な状態や属性を明示するための登記で、所有権などの権利関係に関する登記とは区別されます。表示に関する登記にも報告的登記と形成的登記の区分があり、それぞれ異なる役割を果たします。
1. 表示に関する報告的登記
報告的登記に分類される表示に関する登記は、不動産の現状に関する情報を正確に記録し、既に存在する不動産の物理的状態や属性を公示するために行われます。この登記は、権利関係の発生や変更を伴わず、不動産の物理的な状態の変化を第三者に報告する機能を果たします。
例:
- 建物表題登記:建物が新築された際、その物理的な状態(所在地、構造、面積など)を登記するものです。これは建物が完成した後に行われるもので、登記自体は物理的な状態を報告するだけであり、新たな権利を発生させるものではありません。
- 土地表題登記:土地の新たな分筆や地目変更などが行われた場合、その物理的状況を報告する登記です。
- 土地表題部変更登記
- 建物表題部変更登記
- 土地一部地目変更・分筆登記
- 土地滅失登記
- 建物分棟・分割登記
- 建物合体登記
- 建物滅失登記
- 共用部分又は団地共用部分である旨を廃止した事による建物表題登記
特徴:
- 登記は既に存在する不動産の物理的状況を報告するために行われます。
- 権利の発生や変更には関与しません。
2. 表示に関する形成的登記
形成的登記に分類される表示に関する登記は、登記を行うことによって初めて法的な効果が発生するものです。登記そのものが、不動産の物理的な属性や状態に法的な効力を与えたり、変更を確定させる役割を果たします。
例:
- 土地の合筆登記:複数の土地を1つにまとめる合筆は、登記を行うことで初めて法的に土地が一体化されます。この登記をしない限り、土地は別個の状態のままであり、合筆の法的効力は発生しません。
- 土地の分筆登記:1つの土地を複数の土地に分ける分筆も、登記が行われて初めてそれぞれの土地が別個のものとして法的に認められます。
- 表題部所有者の表示変更登記
- 共用部分または団地共用部分である旨の登記
特徴:
- 登記によって法的な状態が変化し、物理的な属性の変更が確定される。
- 登記がなければ、物理的な状態の変更が法的に認められない。
報告的登記と形成的登記の比較(表示に関する登記)
報告的登記 | 形成的登記 | |
---|---|---|
役割 | 既に存在する不動産の物理的状況を報告 | 登記によって初めて不動産の物理的状況が法的に確定 |
例 | 建物表題登記、土地表題登記 | 土地の合筆登記、土地の分筆登記 |
法的効果 | 物理的状況の報告にとどまり、法的効果は伴わない | 登記を行うことで法的な効力が発生し、不動産の状態が確定する |
まとめ
- 報告的登記は、既に発生している権利や事実を第三者に対抗するために行うもので、日本の不動産登記制度の基本的な役割です。
- 形成的登記は、登記そのものが権利の発生や変更、消滅をもたらす特別な場合に適用される登記です。
日本の不動産登記制度は、報告的登記が中心ですが、特定の場面では形成的登記も重要な役割を果たします。
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