土地の境界線と境界立会

土地の境界

 土地の境界線は、隣接する土地との間で所有権の範囲を区切る線を指します。土地の境界線は非常に重要で、土地の利用や売買、トラブル防止のために正確に把握しておく必要があります。

1. 土地の境界線の種類

 境界線には大きく分けて次の2種類があります。

公法上の境界線(公的な境界)

  • 公法上の境界は、道路や公園などの公有地と私有地の境界を示すものです。行政機関が関与して決定されるもので、基本的に動かせません。
    • 例: 道路と民間の土地との境界、川沿いの土地との境界など

私法上の境界線(私的な境界)

  • 私法上の境界は、隣接する私有地同士の境界を指します。隣接する土地所有者同士の協議や法的手続きで決定されます。

2. 境界線の確認方法

土地の境界線を正確に把握するためには、いくつかの方法があります。

1. 測量

  • 土地家屋調査士が土地を測量し、正確な境界線を確認します。隣地所有者との合意があれば、境界標(杭)を設置することも可能です。

2. 地積測量図や公図

  • 法務局に登録されている地積測量図公図を確認することで、土地の境界を知ることができます。ただし、古い公図は正確でない場合もあります。

3. 筆界特定制度

  • 境界が不明確な場合、法務局が筆界特定登記官を通じて境界を特定する「筆界特定制度」を利用することができます。これは裁判を起こすことなく行政手続きで解決する方法です。

4. 確定測量

  • 隣地所有者との協議のもと、正式に境界を確定する「確定測量」を行うことができます。測量結果に基づいて境界標を設置し、法的に境界を確定します。

3. 境界線のトラブル

境界線に関するトラブルは、隣人との関係に悪影響を及ぼすため慎重に対処する必要があります。代表的なトラブルには次のようなものがあります。

1. 越境

  • 建物やフェンスが隣地に一部侵入してしまうことを越境と言います。越境が発生すると、隣地所有者から建物の撤去や補償を求められる場合があります。

2. 土地の無断使用

  • 境界線を越えて隣地を使用することも問題です。例えば、駐車場や庭が一部隣地にかかっていると、所有権侵害としてトラブルになることがあります。

3. 境界標の移動や破損

  • 既に設置された境界標(杭やブロック)を故意に移動させたり、破損させたりする行為は法律で禁止されています。これにより、隣地とのトラブルが発生する可能性があります。

4. 境界線トラブルの解決方法

境界線トラブルが発生した場合、冷静に対処することが重要です。以下の解決策があります。

1. 協議

  • まずは、隣地の所有者と直接協議し、合意を目指します。友好的な話し合いで解決できることが理想です。

2. 専門家の介入

  • 測量士や弁護士、不動産の専門家に相談し、境界線を正確に測量したり、法的な助言を得たりすることが有効です。

3. 筆界特定制度の利用

  • 協議がまとまらない場合、法務局の筆界特定制度を利用して境界を確定することが可能です。

4. 裁判所での解決

  • 協議や行政手続きで解決しない場合、裁判で境界確定の訴訟を起こすことも考えられます。ただし、裁判は時間や費用がかかるため、最終手段として選ぶことが多いです。

境界立会について

 境界立会とは、土地の所有者が自分の土地と隣接する土地との境界線を確認・確定するために、隣地所有者同士が立ち会い、実際に境界を確認する手続きのことです。境界立会は、土地の境界線に関して互いに合意を得るために行われ、将来的なトラブルを防ぐ重要な作業です。

境界立会が行われる目的

 境界立会の目的は、以下のような場合に境界を正確に確認・共有し、境界線に関するトラブルを未然に防ぐことです。

  1. 土地の売買や分筆時
    • 土地を売買する際や、土地を分割して登記する場合、正確な境界線を確定しておく必要があります。境界が不明確なまま取引すると、後々トラブルが発生する可能性があります。
  2. 建築や工事の前
    • 新しい建物を建てる、フェンスを設置するなど、隣接地に影響を与えるような工事を行う前に、境界を確定することで、隣地との紛争を防ぐために行われます。
  3. 相続や財産分与の際
    • 相続や財産分与で土地を分ける際にも、境界を正確にしておくことが必要です。
  4. 境界に関するトラブル防止や解決
    • すでに境界に関してトラブルが発生している場合や、越境の可能性がある場合に、境界立会で問題を解決します。

境界立会の手順

  1. 測量士による測量
    • まず、測量士が境界の位置を正確に測量し、境界標を設置する準備をします。隣地所有者に立ち会ってもらう前に、事前に調査と準備を行います。
  2. 隣地所有者への通知・日程調整
    • 測量を終えた後、隣地の所有者に対して「境界立会を行いたい」という通知を送ります。隣地所有者と日程を調整し、双方が立ち会える日時を決めます。
  3. 現地での立会い
    • 立会いの日に、測量士が境界線のポイントを説明し、隣地所有者とともに現地で境界を確認します。立会いの際に双方が納得すれば、正式に境界が確定します。境界標(杭やプレートなど)を設置することが多いです。
  4. 境界確認書の作成・署名
    • 立会いの結果、境界線に対して双方が合意した場合、合意内容を記録した境界確認書を作成し、双方が署名します。この確認書が後日の証拠となり、境界に関するトラブルが発生した場合に備えます。

境界立会の注意点

  • 隣地所有者の協力が必要
    • 境界立会は、隣地の所有者が参加し、合意を得ることが前提です。隣地所有者が立会いを拒否した場合、話し合いが進まないため、協力を得ることが重要です。もし協力が得られない場合、法的手続きを検討する必要があります。
  • 境界標の設置
    • 境界線が確定したら、境界標(杭など)を設置することが一般的です。境界標は、将来的なトラブルを防ぐためにも正確に設置し、第三者が勝手に移動させたり、破損させたりしないよう注意します。境界標の移動や破壊は違法行為です。
  • 不動産の専門家のサポート
    • 境界線に関する問題は、専門的な知識が必要な場合があります。測量士や不動産の専門家、または弁護士に相談することで、適切な手続きとアドバイスを受けることができます。

境界立会が必要な場面

境界立会は、以下の場面で特に重要になります。

  • 土地の売買や相続: 土地を売却する際や、相続で分ける際には、正確な境界線が明確であることが重要です。買主や相続人が安心して土地を取得するためにも境界立会が行われます。
  • 建築計画時: 新しい建物やフェンスなどを建設する場合、工事中に隣地を侵害しないように境界を確認する必要があります。
  • 越境問題の解決: 境界線をめぐって隣地との間でトラブルが発生した場合、境界立会によって合意を得て問題を解決することが重要です。

境界立会にかかる費用の内訳

  1. 測量費用
    • 境界立会の際、正確な境界を確認するために測量士による測量が必要です。測量費用は、土地の大きさや形状、地形の複雑さ、隣接する土地の数などによって異なります。
    相場
    • 一般的な土地の場合:10万~50万円程度
    • 広い土地や複雑な地形の場合:50万~100万円以上になることもあります。
    測量には、現地での調査や法務局に提出するための資料作成などが含まれます。
  2. 境界標の設置費用
    • 境界立会の後、正式に境界線が確定した場合、境界標(杭など)を設置します。この設置にも費用がかかりますが、測量費用に含まれることが多いです。境界標をより耐久性のあるものにする場合には、別途費用がかかる場合もあります。
  3. 隣地所有者への通知費用
    • 隣地所有者に境界立会の通知を行う場合、書面や手続きにかかる費用が発生することがあります。特に、複数の隣地所有者がいる場合、手配や調整にかかる時間と費用が増えることがあります。
  4. 確認書作成費用
    • 境界立会の結果をもとに、正式に「境界確認書」を作成する場合には、確認書の作成や署名のための費用がかかります。これは土地家屋調査士や不動産の専門家に依頼する場合の追加費用として計上されることがあります。

境界立会の費用を左右する要因

  1. 土地の面積や形状
    • 大きな土地や形が不規則な土地では、測量が複雑になり費用が増加します。また、隣接する土地が多い場合、各所有者との調整も費用に影響します。
  2. 隣地所有者の協力状況
    • 隣地所有者がすぐに協力してくれる場合、手続きがスムーズに進みますが、協力を得られない場合や立会いに時間がかかる場合、費用が上がることがあります。
  3. 立地条件や地形
    • 山間部や傾斜地など、測量が困難な地域では費用が増えることがあります。市街地でも、複雑な建物や道路が隣接している場合、測量作業が難しくなり、追加の費用がかかることがあります。
  4. 法務局や公的機関への手続き費用
    • 境界線を確定するために、測量結果をもとに法務局で登記する場合は、別途手続き費用が発生します。これも全体の費用に影響を与えます。

まとめ

 境界立会は、隣地所有者と共に土地の境界を確認し、合意を得るための重要なプロセスです。特に、土地の売買や建築工事などで境界を巡るトラブルを防止し、将来的な紛争を避けるためにも、しっかりと境界立会を行い、確認書を作成することが推奨されます。

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