成年後見制度と介護保険制度についてと関係性

 成年後見制度介護保険制度は、高齢者や障がいのある方々の生活を支えるための重要な制度ですが、それぞれの目的や役割が異なります。ただし、これらの制度はしばしば相互に関連し、組み合わせて利用されることが多いです。以下で、両者の関係について詳しく説明します。

0. 制度施行の背景

 2000年当時は、日本が急速に高齢化する中で、高齢者や障がい者の生活を支援するための重要な転換期となりました。成年後見制度は、個人の判断能力が低下してもその権利を守り、財産を適切に管理するために作られました。一方、介護保険制度は、介護が必要な高齢者に対して社会全体で支援を提供し、家族の負担を軽減する目的で導入されました。

 両者は、被後見人が介護保険サービスを利用する際に、成年後見人が契約や費用の管理を代行するなど、相互に関連しながら機能しています。

成年後見制度

  • 施行開始: 2000年4月1日
  • 概要: 成年後見制度は、2000年4月に施行された「介護保険法」と同時期に開始されました。この制度は、判断能力が不十分な高齢者や障がい者を法的に保護し、彼らの生活や財産を支援するための仕組みです。従来の禁治産制度や準禁治産制度を改め、より柔軟かつ本人の意思を尊重する形で新たに作られた制度です。

介護保険制度

  • 施行開始: 2000年4月1日 成年年後見制度と同じ日です。
  • 概要: 介護保険制度も2000年4月1日から施行され、高齢化社会に対応するための仕組みとして導入されました。40歳以上の人々が保険料を支払い、65歳以上の人や特定疾病を持つ40歳以上の人が介護サービスを利用できる制度です。高齢者の自立を支援し、介護の負担を社会全体で分かち合うことを目的としています。

1. 成年後見制度の役割

  • 目的: 成年後見制度は、判断能力が不十分な高齢者や障がい者が、自らの財産を適切に管理できなかったり、日常生活の契約(介護サービスの利用契約、賃貸契約など)を自ら行えない場合に、後見人がその支援を行う制度です。
  • 具体的な役割: 後見人は、介護施設への入所手続きや介護保険サービスの契約、医療費の支払い、介護費用の管理といった法的・財務的な管理を代行することができます。後見人は家庭裁判所から選任され、本人に代わって重要な意思決定を行います。

2. 介護保険制度の役割

  • 目的: 介護保険制度は、介護が必要な高齢者や障がい者が、日常生活を支えるために介護サービスを受けられる制度です。市区町村が運営し、65歳以上の方や特定の条件に該当する40歳以上の方が対象となります。
  • 具体的な役割: この制度を利用することで、訪問介護、デイサービス、施設入所といった介護サービスを受けられます。介護保険は、基本的に利用者本人がサービスの契約を行い、サービスにかかる自己負担費用を支払います。

3. 成年後見制度と介護保険制度の関係

成年後見制度と介護保険制度は、次のような点で関わりがあります。

介護サービスの利用契約や手続きの代行

  • 介護保険サービスを利用するには、本人またはその代理人が契約を行う必要がありますが、判断能力が低下している場合、自分でこれを行うことが難しいケースがあります。
  • この場合、成年後見人が本人に代わって介護保険サービスの契約や申請手続きを行います。これには、介護認定の申請やケアプランの同意、施設入所の契約などが含まれます。

介護費用の管理

  • 介護サービスを利用する際には、利用料(自己負担分)や関連する医療費を支払う必要があります。本人がこれらの財務管理を行えない場合、成年後見人が介護費用の支払いを管理する役割を果たします。
  • 介護保険制度を利用している場合でも、後見人が本人の口座から適切に支払いを行い、財産が不正に使われないよう管理します。

施設への入所手続きと財産管理

  • 本人が施設に入所する必要がある場合、成年後見人は入所に伴う契約や手続きを代行します。また、施設入所にかかる費用の支払いも後見人が管理します。
  • 特に施設入所時には、高額な費用がかかることが多く、成年後見人が財産管理を適切に行い、支払いや資産の維持を行います。

4. 成年後見制度が必要になるケース

以下のようなケースでは、介護保険制度と成年後見制度の併用が有効です。

  • 認知症や精神障害などで判断能力が低下し、介護サービスの契約や財産管理ができない場合。
  • 介護施設の入所やサービスの契約に際し、本人が同意できない場合。
  • 介護費用や日常生活の支払い、資産管理を本人が自ら行えない状況。

5. 成年後見制度のメリット

成年後見制度を活用することで、介護保険制度を円滑に利用するための支援が提供されます。

  • 介護サービスの確実な利用: 後見人が契約や手続きを代行することで、本人が適切な介護サービスを受けられるようになります。
  • 財産管理の適正化: 成年後見人が介護費用を管理することで、財産の浪費や不正な使用を防ぎます。

6. 注意点とまとめ

  • 成年後見人が介護サービスの契約を行う際、本人の意向や生活の質を尊重する必要があります。裁判所の監督下で行動するため、透明性の高い財産管理が求められます。
  • 成年後見制度の利用には費用がかかり、裁判所の申立て手続きや後見人への報酬が必要です。
  • 身上配慮と財産管理を法定代理人として行う後見人は、医療手術行為の同意ができません。

おまけ

 厚生労働省の介護給付費等実態統計の概況によりますと

となっています。毎年10万人以上介護保険を利用する人が増えていますね。また、令和4年度は約660万人が利用しています。

一方、後見制度というと

 同じ令和4年で見ると約24.5万人が利用していますが、介護保険と比べると約1/27しか利用されていません。また、任意後見が全体の約1%ちょっとしか利用されていないことも注目です。理由はあるのですが、気になる方は私に直接尋ねてみて下さい。


 成年後見がもっと認知されるように、我々士業も頑張って法律以外にも勉強することがたくさんありそうです。

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