尊厳死宣言とDNR

 

 尊厳死とは、治療が不可能な病気にかかっており、意識を回復する見込みがない患者が、本人の意思に基づいて延命治療を中止して自然な死を迎えることです。自然死や平穏死とも呼ばれ、生きることの放棄ではなく、健やかに自分らしく生き、尊厳を保って安らかな最期を迎えることを目的としています。

 つまり、尊厳死宣言とは、病気が治らない末期状態にある人が、延命措置をしないなどして自然な死を迎えることを望む意思表示です。この尊厳死宣言は、公正証書により作成して残すことができます。

 私は元々医療従事者なのでDNRという言葉の方がしっくりきていました。

 DNR(Do Not Resuscitate)とは、患者の容態が急変して心停止した場合に心肺蘇生を行わないことを意味する言葉です。患者やその家族の意思表示に基づいて決定され、医師が指示することを「DNR指示」といいます。

 DNRは、癌の末期や老衰、救命の可能性が低い患者など、終末期状態の患者に対して求められる判断材料です。DNRの意思表示があった場合は、DNRシートやカルテ等にその旨を記載します。

 DNRと似た言葉に「DNAR(Do Not Attempt Resuscitation)」があり、蘇生する見込みがない患者に対して心肺蘇生を行わないことを意味します。DNRとDNARは意味に大きな違いはありませんが、DNRが「蘇生が成功する見込みがあるのに行うな」と解釈され得る懸念が生まれ、DNARという用語が徐々に使われるようになりました。

 患者が急変しても延命をしようと思えば、人工呼吸器をつけたりすれば、多少は持つでしょう。自分が病院に着くまでの間、なんとか生きている顔を見たい。そんなご家族の方はたくさんおられます。なので、病院などではDNRがとれていない患者に対しては、なんとか家族が来るまでの間、心配蘇生等でつなぎ止めたりしている現状があります。

 話は戻って尊厳死宣言とは、人生の最後を自分の意思によって決めたいからであり、身体的にも、精神的にも、経済的にもとても耐えられない人を守る約束のことであり、決して悪いことではないと感じています。

 たくさんの患者をみてきましたが、現実はみんながみんなストンと簡単に死ねるわけではありません。最後の最後くらい、自分の意思を通してもらえる、そんな生き方があってもいいと思うのです。

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